ばかにゅー.com

映画「オールドボーイ」は矛盾だらけが故に常軌を逸した名作である。

映画「オールドボーイ」は矛盾だらけが故に常軌を逸した名作である。

映画の好みは人それぞれだと思いますが、皆さんはどのような作品が好きですか。
私は見終えた後に「なんだこのクソ映画って思わず口に出してしまうような映画が大好きです。

それはただただ救いようのない胸糞悪くなるような物語だったり、世界観が崩壊していてまったく理解できない異常作品だったり、物語の起伏がなく映画化するまでのものなのかと疑問を抱くような単調作品だったり、実写なのになんだかクレイアニメーションを観ているかのようなB級CG作品だったり、とにかくそんなYahoo!映画評価2.4あたりの作品がとっても大好きなんです。

ただ最近はそんな2.4点あたりの作品に出会えることが少なく、刺激的な作品はないだろうかとインターネットで「衝撃 結末 映画」で調べてみることにしました。
そして調べ上げた中から、とりあえず名作と呼ばれるものたちを見ることにしました。セブンやメメント、セッション、エス、そして「オールド・ボーイ」。

どれも名作なのですが中でも「オールド・ボーイ」は私好みの作品でした。名作なのだけれど、ところどころB級感が漂うシーンがある。そして何よりも制作背景がとても良い。確かに映画としては名作だけれど、制作背景を鑑みた時に倫理的に名作と呼んでしまっていいのかという矛盾を感じるものがあり、その理不尽さがとても良いのです。

なんてそんなことを言っても何も伝わらないと思うので、詳しく私がこの作品が好きな理由についてお話ししていきたいと思います。
※ガンガンネタバレします。



「オールド・ボーイ」の内容

2003年公開「オールド・ボーイ」。パク・チャヌク監督の作品です。
土屋ガロン、嶺岸信明による同名の日本の漫画「ルーズ戦記 オールドボーイ」が原作となっております。

妻と幼い娘をもつオデスという男が何者かに15年間監禁され、監禁から解放されたのち自分を監禁した犯人に復讐をするというストーリー。

主人公オデスはある日、ウジンという男に“口数が多すぎる”という理由で15年監禁されます。
監禁中に彼は妻が何者かに殺されたことを知り、しかもその罪が自分に着せられていることを知ります。
妻を殺され、娘の行方もわからず、世の中には犯罪者扱いをされるという救いを求める人がいない、絶望しながらも復讐に火を灯した彼は脱出を図ろうとします。そしてある日、彼は眠りから目を覚ますといきなり、とある催眠術をかけられ、屋外に解放されます。監禁から15年目の出来事でした。

解放された彼は、どこかに救いを求めるわけにも行かず、フラフラと街を彷徨います。街を彷徨っている間に、ホームレスからいきなり携帯電話と財布を渡されます。彼を監禁したウジンという男からの贈り物でした。
復讐相手からの支給品とはいえ、所持金がなかった彼はお腹を空かせていたため、近くにあった寿司屋に入店します。

食事をしていた彼は突然意識を失って倒れてしまいます。オデスが目をさますと、そこは寿司屋の板前であったミドという女性の家でした。彼女が看病をしてくれていたのです。
それから行き場のないオデスはミドに助けを借りながら、自らの復讐のために監禁した首謀者を辿っていくことになります。オデスの事情を知ったミドは積極的に彼に力をかし、やがて二人の間には愛が芽生えていました。

そしてある日、ついに監禁の首謀者ウジンへとたどり着きます。
オデスはウジンにたどり着き、監禁の事情を聞き出そうとするも、“口数が多すぎたから監禁された”
とだけ口にし、その理由を言おうとしません。
ウジンは心臓が弱くペースメーカーを付けており、そのペースメーカーには遠隔スイッチが付けられていました。遠隔スイッチを押すことでいつでも自殺できるというウジンを拷問で監禁の理由を聞くわけにもいかず、自分で監禁された理由を見つけてみろと突き放されてしまうのです。
ウジン「“砂粒であれ岩の塊であれ水に沈むのは同じだ”」

オデスはネットカフェを経営している学生時代からの友人の手を借り、ウジンという男がとある同級生の女の子、スアの弟であるという事実を掴みます。
そしてそのスアは学生時代に自殺をし、すでに亡くなっていたのでした。
なぜ自殺をしたのか。同級生から話を聞いていくうちにオデスは当時の記憶を思い出し、彼女が自殺した理由の発端は自分であったことに気が付きます。

オデスが学生時代のある日、ウジンとスアが性交(近親相姦)しているところを見かけます。オデスはそのことを友達に話し、秘密にしろと言ったものの、噂は学校中に広がり、やがて妊娠説まで出ます。
それがきっかけでスアは想像妊娠をしてしまいます。学校中で淫乱女だと噂されたのと、実の弟との子供ができてしまったという負い目で自殺。ウジンはその復讐のために15年オデスを監禁したのでした。
ウジン「俺の股間が姉さんを妊娠させたのではない。お前の舌が妊娠させたんだ。」

監禁された理由を知ったオデスとミド。ミドはそんな理由で15年も監禁までされなくちゃいけないのかと憤慨しましたが、理由を知れただけでもいいじゃないかとオデスの復讐を止めようとします。しかし、オデスの中で復讐することが生きる目的の一つとなっていたために、再びウジンの元に行くことを決意するのでした。

ウジンの元に着き、オデスは復讐をしようとしますが、彼からある事実を突きつけられます。
その内容というのが
・ウジンはオデスとミド二人が出会う前に事前に催眠をかけていた。
・その催眠術によって二人は出会い、心も体も愛し合った。全て催眠術によって操作されていた。
・しかもウジンとミドは実の親子である。15年も監禁したのにはミドの成長を待つためだった。

ウジンの復讐というのは、ウジンに実の娘ミドと性行させることでした。そしてミドにもこの事実を漏らそうとしますが、オデスがなんでも言うことを聞くからといって自らの舌をハサミで切り自殺を図ります。
ウジンは彼の絶望した姿に少し復讐心が満たされたのか、それともこれ以上の絶望はあまり意味がないと思ったのか、ミドには秘密を漏らさず、復讐を遂げることにします。
そして最後にウジンが去り際に自分のペースメーカーのスイッチを置いていきます。
オデスはそのスイッチをすぐさま手にし、異常な笑顔を見せながらスイッチを押す。すると部屋のスピーカーからオデスとミドの性交時の音声が流れる。
オデスは再び絶望の淵へと落とされる。

ウジン「俺と姉は承知の上で愛し合った。お前たちはどうだ。」

完全な復讐を遂げ、生きる意味を失ったウジンは拳銃で自殺します。

それから月日が経ち、オデスは自分に催眠術をかけた催眠術師を見つけ出します。そしてその催眠術師に秘密を知る自分を殺させ、ミドを一人の女性として再び愛し続けるのでした。

“砂粒であれ岩の塊であれ水に沈むのは同じだ。”
大小に関わりなく、罪は罪なのだと。

原作との違い

結構重たいシリアスな内容ですよね。しかし、実際に見ているとそこまで重くは感じない。それはきっと所々挟まれるB級チックなシーンがあるからかも知れません。
特にアクションシーンです。

1対多数のアクションで、主人公が圧倒的な力で敵をなぎ倒していくシーンがあるのですが、敵対する軍団がこう、あわわわ、こ、こいつ強すぎる…!みたいな感じで軍団で退くシーンが何度かあるのです。あとワンカットで多数を圧倒するシーンがあったり。ものすごくストーリー的にはシリアスなはずなのに、なんだかジョークのように感じてしまう。一瞬リアリティに欠けるシーンがあるというか、毛色の違うシーンがある。まるでジャッキーの映画を見ているような。

それまでは物凄くストーリーに吸い込まれていたのに、急に突き放されてしまう。そういうストーリー的な矛盾ではなく、魅せ方的な矛盾、制作的な矛盾、それが、それこそがとても良い。
勿体無さというのがとても愛おしく感じる。初めて開拓した分野でした。

原作:漫画版オールド・ボーイとの違い。

土屋ガロン、嶺岸信明による同名の日本の漫画「ルーズ戦記 オールドボーイ」を原作としていますが、映画とは全く違います。
基本設定の「監禁された男が監禁された理由を知るために奔走する」というのが同じなだけであって、内容は全く違います。近親相姦なんてものは一切出てきません。復讐者の姉弟という設定すらありません。なんなら映画版は15年監禁でしたが、漫画版は10年監禁です。全く別物です。

最初は原作「オールドボーイ」に寄せて制作しようとして、徐々にずれていったのか、それとも最初からこういうストーリーで制作しようとしたのか。

名作だけど迷作でもあるからこそ、名作に達した。

映画版「オールド・ボーイ」を制作したショーイースト社は、漫画「ルーズ戦記 オールド・ボーイ」の発行元である双葉者から訴訟を受けました。

内容は双葉社および原作者に対して債務不履行、報告義務違反など。
双葉者はその改善を求めて、ショーイースト社に連絡をしていたようでしたが、一向に改善されなかったようです。そして、何よりも問題なのが、ショ−イースト社は実態のない会社だったという。
詳しくはこちら:https://www.futabasha.co.jp/introduction/old_boy/index.html

この訴訟が映画を制作した時のことに対しての訴訟だったのか、ハリウッド版リメイクを制作する際に起きた問題に対する訴訟だったのか、詳しくは私もわかりません。色々調べましたが、難しくて理解することができませんでした。なのでここからは憶測でしかありません。

もしこの双葉社が原作者を守るための訴訟の内容が映画設定に関することも含めていたとしたら。
原作にはない映画のストーリーの根本的な部分、近親相姦に対して、原作にはこんなことは描いていない、原作に対するイメージが落ちるというものだったとしたら。
そして常識的に原作の発行元である双葉者の意向をしっかりと聞いていたら、名作と呼ばれる韓国映画版「オールド・ボーイ」は存在していなかったかもしれません。

そう考えたらタイムパラドックスではないですけど、そういう矛盾的なところが垣間みえて、私的にはさらに魅力を感じてしまうわけです。

もちろん、全て憶測でしかものを言っていないのでパラドックスもクソもないのですが、ロマンを求めてこうであってほしいなんて。

ものすごく長くなりましたが、個人的にあらゆる矛盾を感じて魅力的に思う作品「オールド・ボーイ」。
ぜひ一度観ていただけたらと思います。原作の漫画との違いもぜひ。

Return Top

Copyrighted Image