
4月某日、僕は首都圏から一番近い離島、初島(はつしま)の堤防に立っていた。
師匠がせっせと釣竿のセッティングをしてくれるのを何もできない僕はとなりで意味もなく眺めている。
ここのところ夏日が続いていたというのに、なんだか今日は少し肌寒い。
目次
初心者でも楽しめる釣り方
師匠は初めての釣りでも楽しめるようにと釣り具やらエサやらは全て事前に用意してくれていた。
あほ丸出しで「釣れた魚を家で食べるのが楽しみですねー」と話しかける僕に、それなら結果にコミットする釣り方にしようと師匠が提案してくれたのがロックフィッシュゲームと呼ばれる釣り方だった。
ゴツゴツとした岩場を歩いて移動して、岩と岩の間に潜んでいる魚を釣る。師匠は慣れた様子で岩場を移動していき、手本とばかりに岩穴に釣り糸を垂らすと、わずか数分で小魚が釣れた。
これなら僕にもできそうだ。
師匠は軽々と移動していく岩場が僕には予想以上に歩きづらい。
子供の頃に、水の張った米畑に弟とふたりで遊んでいたら、後方からヘビが泳いでくるのに気づいてパンツ一丁の姿のまま全力で逃げた時のような危機感を、大人になるとただ岩の上を移動するだけで感じるようになってしまった。
ひさしく体験していなかった、五感すべてを刺激する遊び。
根掛かりがコワイ
ようやくたどり着いたフィッシングポイントで師匠と同じように糸を垂らすが、速攻で根がかり(釣り針が底に引っかかって取れなくなること)してしまった。
師匠、ごめんなさい。僕にはこんな簡単なことも出来ないようです。
「ああ、大丈夫。この釣り方は根がかりするもんだから」と海のように深い心を持つ師匠。
そうだよね、こういうもんだよね、と落ち込みかけた心を奮い立たせて、針を付け直してもらった。そして、人の竿を片手に意気揚々と釣りを再開する。
2、3度のチャレンジを繰り返すと、何かが糸を引く感触があった。
「こ、これは!」
……また根がかりだった。
何度も師匠に付け直してもらうのも悪いので、やり方を教えてもらうことに。
これで怖いものは何もない、あとは釣れるまでチャレンジを続けるだけである。
それから1時間くらいたっただろうか、今までに無い手応えに僕の指先が震える。
「おっしゃー!」
釣り針の先には、それはそれは立派な小魚がいた。僕はついにやったのだ、海(岩礁)で魚を釣ることに成功した。
サイズは関係ない、釣れたという事実が大事なのだ。
その頃、一緒に初島へ来ていたメンバー3人が師匠、僕を含む釣り部隊に合流する。
遅れて参加したメンバーが釣りを始めたところ、早々に僕が今まで釣った魚より、ひとまわり大きい魚をすんなり釣り上げてしまった。
「なんだったんだ、今までの努力は」
釣りは運も大事だというが、あまりに理不尽な展開に落胆の色は隠せなかった。
昼メシは初島ならではの海鮮
集中して釣りを続けていたせいか、腹ペコ状態なので昼メシがてら休憩を取ることになった。
初島では、同じようなメニューの店舗が何軒も横並びで建っているので、どこにしようか選びにくい。
食べログの評価を参考にして入ったのが、「めがね丸」というお店。
僕が選んだメニューは、その中でもあからさまにオススメの雰囲気ただよう“船長おまかせ海鮮丼”なるメニュー。
なるほど、これが評価の高い要因かと納得する美味しさで、生姜の入ったオリジナルの醤油タレが鮮度抜群の海鮮と相まって、腹ペコの胃袋をガッシリと掴んで離さなかった。
食事を終えて早々に、僕は先ほど簡単に超えられてしまった釣果(成果)に納得できず、師匠と釣りに向かい、他のメンバーは島観光へと向かう。
結局ヘトヘトになりながらも、最後の最後に1匹だけ20センチほどの魚を釣り上げることができて、記念すべき僕の初釣りは及第点をつけられる成績で終わった。
初釣りを終えてみて
もともと釣りをしてみたいと興味はあったものの、ひとりで始めるきっかけが見つからず、機会があればと長い間チャレンジすることなくきた。
お誘いいただいたのをきっかけに、遂に実現した釣りは、帰りに師匠へ次回の釣りを約束してもらうほどに楽しかった。
何が楽しかったのかと聞かれれば、やっぱり釣れる瞬間だろう。魚を釣り上げたときにそれまでの全てが報われる感覚は努力して達成したような感覚を与えてくれる。
釣りの楽しみ方はまだまだ奥が深そうで、凝り性の僕には道具選び一つだけでも楽しめそうである。
そんなことを思いながら、財布の中身を見て少し切ない気持ちになった。
海の釣り場情報
https://tsuriba.info/
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