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今日から小説家になってみた。第1話「喫茶店noi’s」 

今日から小説家になってみた。第1話「喫茶店noi’s」 

「あーー暑い」

今日は天気予報で比較的涼しい夏日になると予報していたにも関わらず、一向に涼しさを感じる気配はない。

手元にある見慣れた四角い電子端末を覗き込むと15:50と時刻が記されている。

「マスター、このくそ暑い店内でアイスコーヒーを頑なに出さないのはどうなんです?」

此処は 広瀬 夕(ひろせ ゆう)がいつも通う喫茶店、空調機器の故障で12畳ほどの店内は窓を開けてもなお、客を向かい入れる店舗とは思えないほどに蒸し暑い。そして店内には茹だるような暑さとは反比例するように楽しげなジャズが小さく響いている。

「五月蝿いな、俺も暑いんだから我慢しろよ」

カウンター越しにそう返答しているマスターは白いシャツの袖を捲り上げ、黒ベストを着た初老の男性、骨格はしっかりしていて長い白髪を一つにまとめている。

背丈は180センチほど、いつも短く整えられた白ひげが印象的だ。シャツにバッチリの汗染みが見えることから彼も十分に暑がっているのだろうことが伝わってくる。

「アイスコーヒーなんてのは珈琲の亜種だわ、そんなもん俺は作らねぇよ」

全くもって理解できない理由である、確かに店主にメニューを決める決定権があるにしても、もう少し客の立場になった経営をすべきだろう。そんなことだからカウンター5席テーブル2席のこの店には多いときでも2組ほどの客しかいないのだ。

「相変わらずの独自性ですね」

そんな小言を呟きつつも週に2、3回はこの店に来ているのだから、僕も違わず変わり者である。

「それにしても、今日はバイトには行かないのか?」

「久しぶりに休みでして、今日はここで直志と待ち合わせさせてもらってるんですよ」

「あー、直志ね、それにしてもお前の友人はあいつ以外に全くいねぇな」

富永 直志(とみなが ただし)は高校生1年の頃から4年の付き合いになるだろうか。出会ってからの年月はそこまで長くはないが、僕にとっては数少ない馬が合う友人である。

今日は直志から相談したい事があると電話があり、いつもの喫茶店noi’s(ノイズ)へ集合となった。

そんな会話をしている最中にポケットの中からブルブルと僕を呼び出す無機質な端末。

「もしもし」

「ごめんごめん、ちょっと遅れちゃっててさ、noi’sに着くの30分くらい遅れるわ」

「了解、じゃあまた後で」

「悪りぃな、急いで行くから、じゃあ」

そう言って電話は切れた。

「なんだ、直志は遅刻か?」

「そうみたいです、自分から呼び出しておいて遅刻ですよ」

「まぁそう不貞腐れんなよ、ほれ、これでも食え」

そう言って、僕の目の前には少し背の高い小さなガラスの器に乗ったバニラアイスが置かれた。バニラアイスは特別好きではないが、この店内の状況では格別に美味しいだろう。

「あ、ありがとうございます」

偏屈なまでにこだわりを持っているマスターのお陰でドリンクメニューは珈琲か水しかないが、そのほかのフードメニューに対してはことのほか興味は薄いようでその日の気分で色々と用意しているようだった。

何にせよ有難い振る舞いだ、目の前のカウンターに出されたアイスにスプーンを入れようとした時だった。少し遠くの方でゴロゴロと空が唸りを上げた。

「夕立か、悪いが店の窓を閉めるの手伝ってくれないか?」

「了解っす」

マスターの手伝いで店の窓を閉めながら、空の唸りが凄い速さで自分に近づいてきているのを感じた。窓を閉め切った直後、それまでぱらぱらと降り出していた雨が霧を纏って激しく地面を打ち付け、激しい光と音と共にすっぽりと辺りを覆い尽くした。

「凄い雨だな、この上雨漏りまでしなきゃいいが……」

そうマスターがぼそりと呟いた時、数十メートル先に空から激しく稲妻が揺り落とされた。目前の光景に驚くや否や耳を劈く轟音の中で店の扉が前触れもなくスッと開いた。

そこに立っているのは不思議な雰囲気を放つ、ずぶ濡れた女の子だった。



あとがき

よし、これで僕も小説家だ。

どのくらいのペースで公開するかは未定だけど、完結はさせようと思います。(要望がなくても)

ライター情報

むーさん
また真面目って言われる。

真面目って言うな。ばかやろー。

チップスターうまし。
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