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父と呼べる人へ、さいしょで最後に書いた手紙

父と呼べる人へ、さいしょで最後に書いた手紙

大切な人に別れを告げる時にどんな言葉を送ればいいのだろう。

11月の肌寒さが冬に向かう時間の流れを感じた頃、尊敬していた父が亡くなった。

父といっても血の繋がりがあるわけじゃない。

だけれど、これが父親という人なのかもしれない、そう思えるくらいに想ってくれる人だった。



出会い

初めて会った時、パンチパーマでいかにも厳しそうな見た目に驚いたことを思い出す。

10年という歳月をかけて、少しずつ見た目は変わっていったけれど、話したときの柔らかさは何も変わらなかった。

「すごいねぇ〜、上手だねぇ〜」

それが父の口癖。

いつも他愛のないことを見つけては、本当にすごいことのように褒めてくれる。

自分自身が特に誇っているところでなくても、褒められることの嬉しさを教えてくれた。

仕事

僕は仕事をする父の姿が好きだった。

いつもはすぐにふざけるし、マイペースな人なのに仕事の時は別人のように真剣に打ち込む。

決して相手を威圧するようなことはせずに柔らかい物腰はそのままで、驚くほどキリキリと働く。

そんなONとOFFでの切り替えが上手なところが、単純にカッコよく思えた。

僕が今携わる仕事も、そんな父がきっかけで出会ったもの。

働くようになって、仕事の話をした時にも、やっぱり父は「すごいねぇ〜」といつものように褒めてくれた。

最後

いつも明るくて、飲みにいくことやたくさんの人とワイワイしているのが好きだった父。

大きな病気を何度も乗り越える姿に、父は不死身なのかもしれないと思ったこともあった。

闘病生活の中でも、旅行にいったり、食事をしたり、どんな時でも楽しむことを忘れなかった。

一緒にいる途中、どんなに楽しんでいても、病気のせいで身体の痛みに苦しむことがある。

だけど、決して辛い顔をしているところは僕らには見せないようにする、優しくて強い人。

それでも、憎いガンは父の命を奪っていった。

手紙

今でも実感がない、亡くなる数時間前に意識を取り戻したときも、普通に話せていたのに。

どこからか、僕のことをいつものように呼ぶような気がする。

火葬の日どりが近づいて、父に向けた手紙を書くことになったのに、何を書いたらいいのか思いつかなかった。

僕のことを実際はどう思っていたのだろう。

今となっては確かめようのない事なのに、そんなことを考えてしまう。

棺の中で眠っている。

その枕元にそれぞれが想いを伝える手紙を置いていった。

棺が閉まり、火葬場へと向かう1列に入って歩くと、これで最後なのかと感じると悲しさが込み上げる。

全てが終わって、喫煙所から火葬場の煙突を眺めていたとき。

「ありがとねぇ、よろしくね」

そう、いつものように言われたような気がした。

こちらこそ、今までありがとうございました。

至らないところばかりの僕に優しくしてくれたこと忘れません。

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